生命保険の名義変更は可能? 手続き方法と注意点

生命保険

長い人生、環境やコンディションが変われば、生命保険の契約形態についても変更する必要性があります。ここでは個人加入の生命保険の名義変更について詳しく解説して参ります。

生命保険の名義変更は出来る?

まずは、生命保険に関する基本的な用語と役割について確認してみましょう。

保険契約者 生命保険会社と保険契約を結び、契約上の一切の権利と義務を持つ人
被保険者 生命保険の対象となる人
死亡保険金受取人 保険契約者から保険金の受取を指定された人

生命保険の名義変更といった場合、一般的には、上記でいう「保険契約者」(以下、「契約者」という)を変更することを指します。契約者名義変更(以下、「名義変更」という)は、現在の契約者の同意をもって変更が可能です。生命保険においては、被保険者は保険の対象者本人となるため変更することは出来ません。また、死亡保険金受取人の変更も保険契約者の意志により可能です。その場合は、一般的に受取人変更と呼んでおります。

名義変更をする主なケース

では、生命保険の名義変更が必要なケースはどのような時でしょうか、代表的なケースを確認してみましょう。

子どもの独立

「そろそろあなたが保険料を支払いなさい。」「すでに保険料の支払は終了している生命保険よ、大事に持っておきなさい」と親から保険証券を渡された、もしくは、親として保険証券を渡した、といった経験のある方も多いのではないでしょうか?

保険の対象者である被保険者は子ども、契約者が親となっているケースがあれば、ライフイベントに合わせて契約者変更も必要です。特に子供の結婚を機に契約者変更をする場合は、受取人の変更についても親から配偶者への変更、ここにも注意をしましょう。

離婚

契約者=被保険者の場合であれば名義変更の必要はありません。ただし、死亡保険金の受取人変更、苗字が変わるようであれば、改姓の手続きが必要となります。契約者を変更する必要がある契約形態は、契約者(夫)被保険者(妻)です(契約者(妻)被保険者(夫)の場合も)。

変更の際には保険料の支払口座情報やクレジットカード情報の変更も忘れないようにしましょう。このタイミング(離婚)の場合は、経済環境が大きく変わる可能性が高いので、保障そのものの内容についても見直しを検討すべきタイミングとも言えます。

契約者の死亡

契約者≠被保険者の契約形態で被保険者より先に契約者が死亡した場合は、契約者名義変更が必要となります。この場合は、残された遺族つまり相続人の意志を持って変更することとなります。

名義変更の手続き方法

詳しくは加入している保険会社へ問い合わせをすることをオススメ致します。各保険会社、社内のルール等により提出すべき書類が相違する可能性があります。

名義変更をする際の注意点

保険契約者は、名義変更、内容変更、保険解約といった権利があります。そして、保険料の支払をするという義務もあります。名義を変更した際、すでに保険料支払が終了している場合は、新契約者の保険料負担はありませんが、もし保険料支払が終了していなければ、新契約者が保険料の支払を継続いたします。

では、これまで支払った保険料はどのようになるのでしょうか?

名義を変更したとしても、生命保険会社から旧契約者へ戻される返戻金のようなものはありません。新契約者はすでに支払われてきた保険料含めて保険契約をそのまま受継ぎます。

名義変更では、旧契約者がこれまで支払った保険料を含め新契約者が保険契約を継続する訳ですが、もし、旧契約者が多額の保険料を支払っており、名義変更の後、新契約者がその保険を解約し多額の解約返戻金を受け取ることが出来たとしたらどのような取扱いになるでしょうか?

その場合は、契約者名義変更は旧契約者から新契約者への贈与という扱いになりますので留意が必要です。

名義変更にかかわる税金について

名義変更による贈与、相続、遺贈となり、それが高額ともなれば税金の支払義務も発生します。ただし、契約者変更時点では課税関係は発生せず変更後にその契約が、①保険満期を迎える、②被保険者が死亡する、③契約を解約するなど保険契約の消滅時などの現金が発生した時点で課税義務が生じます。

もし、契約者の名義変更後で上記①②③などの前に旧契約者が死亡した場合などは、生命保険に関する権利の評価として、旧契約者が死亡した時点での解約返戻金相当額で評価し、その金額で相続税の課税対象となります。(財産評価基本通達214) ここでは、名義変更にて発生する税金について詳しく解説していきましょう。

相続税

契約者≠被保険者の契約形態で、被保険者より先に契約者が死亡した場合、この保険契約の権利は相続財産となります。旧契約者(保険料を負担した契約者)から新契約者へ名義変更を行い、その後旧契約者が死亡した場合でも、保険料負担者である旧契約者から新契約者に相続により財産が移転したとみなします。保険契約における権利義務は、契約上、契約者が有しておりますが、相続税では、保険料負担者が有しているものとします。これを通常「みなし相続財産」と呼んでおります。(相続税法第三条➀三)

贈与税

旧契約者から新契約者への贈与となる場合は、贈与を受けた者に納税義務があり、贈与した側には納税義務はありません。この保険契約の権利の評価額は課税されるタイミングでの解約返戻金額となります。よって、契約者変更時点では、課税関係は発生致しません。契約を解約するなど保険契約の消滅時に課税が発生します。

贈与税の速算表

基礎控除後の課税価格 特例贈与財産 一般贈与財産
税率 控除額 税率 控除額
200万円以下 10% 10%
200万円超~300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
300万円超~400万円以下 20% 25万円
400万円超~600万円以下 20% 30万円 30% 65万円
600万円超~1,000万円以下 30% 90万円 40% 125万円
1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円 45% 175万円
1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円 50% 250万円
3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円 55% 400万円
4,500万円超 55% 640万円

※特例贈与財産とは、20歳以上の者が直系尊属(父母・祖父母等)から贈与を受けた財産のこと

名義変更をした契約以外にも、1月1日から12月31日の1年間の間に、同一人物より贈与を受けていた場合は、合算して贈与税の計算となります。詳しいことは、担当税理士さんや所管の税務署に確認してみましょう。

まとめ

生命保険の契約者名義変更は、適切な時期に行わず放置していると思わぬ税金の発生やトラブルを起こしかねません。また、生命保険の契約者名義変更を行うことで、まとまった金額を贈与することや相続対策に活用することも出来ます。詳しくは、保険や税務に詳しいファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。

執筆者

橘 美穂子(ファイナンシャルプランナー)

1997年大学卒業後、外資系金融機関に新卒入社。契約管理部門から営業部門へ。女性の少ない営業現場で、女性ならではの気配りや丁寧な対応でクライアントから絶大な信頼を得て営業部門初の女性管理職となるも、よりお客様に寄り添ったコンサルティングがしたく2014年に転職し現在。マネーセミナーの講師などもつとめる。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士AFP資格
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