生命保険の契約者貸付制度とは? お得にお金が借りられる仕組みを解説

生命保険

生命保険には「契約者貸付制度」という、お金を借りることができる制度があります。

「急にお金が必要になった」「まとまったお金が必要になった」等、お金が必要な場合は生命保険を解約して資金を作ることもできますが、保険を解約せず保険会社から借り入れることで保障を残しながら資金を準備することもできます。

今回は「契約者貸付制度」について、カードローンなどとの比較をおりまぜながらメリット・デメリットをまとめます。

借り入れ等資金準備をご検討の方、今後お金が必要になったときの情報を身に付けておきたい方は是非ご一読ください。

生命保険の契約者貸付制度とは?

契約者貸付制度の概要

契約者貸付制度とは、解約返戻金(「解約払戻金」等保険会社により呼び方は異なります)の一定の範囲内で借り入れをする制度です。したがって、解約返戻金がある契約、例えば終身保険・養老保険・学資保険・個人年金保険等で利用することができます。(解約返戻金がある保険商品でも契約者貸付制度の対象外となるものもありますので保険会社への確認が必要です)また、借り入れができるのは契約者のみである点に注意が必要です。

契約内容は変更されないので保障内容は変わりませんし、将来の満期保険金・年金等も貸付分の返済が完了していれば契約時の内容でそのまま受け取れます。また配当金がある保険の場合も、借り入れを受けたために配当金が減るようなこともありません。

また、借り入れのための「審査」が必要ない、返済方法の自由度が高い等いくつもの利点がある制度ですが、後ほど解説するような注意点もありますので計画的に利用することが大切です。

借り入れできる額は解約返戻金の一定の範囲内です。

借り入れできる範囲は保険会社ごとに異なり、また同じ保険会社でも保険商品ごとに異なることがありますが解約返戻金の70%~90%の範囲の場合が一般的です。(一部には50%の範囲内という商品もあります。解約返戻金があってもあまり借り入れることが出来ないということになります。)

所定の範囲内であれば、ほぼ自由に借り入れの額を指定することができます。

契約者貸付制度の利用方法

借り入れを申し込むには、保険会社の店頭や保険担当者に「契約者貸付申込書」を提出する必要あります。
※インターネット・ATM・お客様コールセンターへの電話等を利用して申し込むことができる保険会社もあります。

1回目の借り入れには「契約者貸付申込書」と申込書が契約書の性質を持つため「収入印紙200円」が必要になります。2回目以降の借り入れの際は収入印紙の必要はありません。
※書類以外での申し込みの場合は1回目の借り入れから収入印紙が不要な場合があります。

その他の提出書類(保険証券や印鑑・印鑑証明書等)については各保険会社で取り扱いが違うため確認が必要です。

必要書類は借り入れをする金額などによって異なる場合があるので、申し込みをする保険会社に確認する必要があります。

申し込みの受付が完了すると数日後には希望した貸付金が口座に振り込まれます。申し込みから着金までの日数は保険会社により異なりますが、保険会社が書類を受け付けた後、翌日~4営業日以内での着金が一般的です。またインターネット・ATM等書面以外の申し込みの場合は、申し込みの時間帯等によっては申し込み当日の着金も可能ですので急ぎで借り入れをしたいときには便利です。

契約者貸付制度の返済方法

「契約者貸付制度」はほかのローンのように一定額を毎月返済する、というようには決められていません。保険の契約期間が終了するときまでに返済を完了していればよいのです。

返済手段はインターネット決済やATM、指定口座への振り込み等があります。保険会社、保険商品によって方法が異なりますので確認が必要です。

契約者貸付制度の4つのメリット

生命保険を解約しなくてもお金が受け取れる

生命保険から資金を得るために解約するケースも多いのですが、解約すると

  1. 保障が無くなる
  2. 将来の満期保険金・年金が無くなる
  3. 新しく加入し直すと一般的に保険料が高くなる
  4. 健康状態によっては新たな保険加入が困難な場合がある

等のデメリットが生まれることになります。

契約者貸付制度を利用すると、ちゃんと返済すればこれらのデメリットがないため、契約を生かしながら資金を得たいという場合には有効な制度ということができます。

解約に関しての注意点などは、こちらでも解説しております。

生命保険の契約者貸付制度とは? お得にお金が借りられる仕組みを解説 生命保険の契約者貸付制度とは? お得にお金が借りられる仕組みを解説 生命保険には「契約者貸付制度」という、お金を借りることができる制度があります。今回は「契約者貸付制度」について、カードローンなどとの比較をおりまぜながらメリット・デメリットをまとめます。借り入れ等資金準備をご検討の方、今後お金が必要になったときの情報を身に付けておきたい方は是非ご一読ください。

返済の融通が効く

契約者貸付の場合は、カードローン等と異なり原則として保険会社から返済方法についての指定はありません。
返済する時期も、特に指定はなく返済したいときに返済することができます。

また、返済額についてもカードローンと違いがあります。カードローンは定期的に一定額以上の返済が必要となるのに対して契約者貸付の返済額は原則自由です。(返済額の単位が決まっている場合があります)

  1. 借入金の利息分だけの返済
  2. 借入金の一部分だけの返済
  3. 借入金全額の返済

など契約者の資金計画に応じて返済計画が自由に設定できるのです。

借り入れの内容(元本や利息の状況)については保険会社から定期的に契約内容の確認としてお知らせが来ますが、返済についての催促等はありませんのでいつどのように返済するか等の自己管理が重要です。

金利が低い

契約者貸付の場合、カードローンなどと比べると多くの場合金利が低いというメリットがあります。契約者貸付の金利は保険会社や保険商品、契約時期などによって異なりますが、おおむね年利2~6%前後になっています。

条件によっては金利が2%前後のカードローンもありますが、上限金利は借入額により15%~20%となり、生命保険からの借り入れの方が低い金利となる場合が多いです。

借り入れの金利は、制度の対象となる保険契約の契約日によって決まります。これは、契約日によって保険料を計算するための予定利率が違うためです。
(借入後に借入金利が変更となることは少ないですが、制度上市場金利が大きく変動した場合には、その時点から金利が変更となる場合があります)

借り入れ時の審査が要らない

契約者貸付の場合、借り入れについての審査がないというメリットもあります。

カードローンではカード作成時などに審査が必要ですが、生命保険の契約者貸付では審査の必要はありません。契約者であればだれでも無条件で借り入れができることになります。

また、カードローンでは審査の内容によって金利が変わることもあります。これに対して生命保険の契約者貸付は、前述の通り契約日によって所定の金利が適用になります。

また、「契約者貸付制度」の利用内容が、信用情報機関に登録されることもありません。

契約者貸付制度の4つのデメリット

以上で見てきた通り、契約者貸付制度は便利な制度ですが注意点もあります。以下では、契約者貸付制度を利用する前に押さえておきたい4つのデメリットについてお伝えしたいと思います。

限度額が低い場合もある

契約者貸付を受けられる金額は保険会社・保険商品によって違いがあります。解約払戻金の70~90%が限度の商品が多いですが、この割合よりも低い商品や契約者貸付ができない商品もあります。
※申し込み方法によって利用限度額が異なる場合もあります。

また、解約返戻金が原資となっているため、契約からあまり時間が経過していないと利用できる額が少ないこともあります。

保険金やお祝い金が返済に充てられる可能性がある

被保険者(死亡保障の対象となる方)が亡くなった場合に借入金が残っていると、保険金から「借入金+利息」が差し引かれた残りの金額が支払われます。契約者は、契約者貸付について知っていても、保険金受取人はそれを知らない場合もあります。この場合、保険金受取人は受け取れると思っていた保険金よりも少ない額しか受け取ることができません。このような場合も想定しながら契約者貸付制度を利用することが重要と言えます。

「保険金が必要ないざという時に、受け取れる額が少なくて困ってしまう」
といったことがないように、返済時期・返済方法などをしっかり管理することが大切です。
※お祝い金なども受取の際に「借入金+利息」が差し引かれる場合があります。

元利金が解約返戻金を超えると保険が失効する

「借入金+利息」が解約返戻金を上回った場合には契約が失効(保険としての効力を失う)するので注意が必要です。

返済計画が自由に設定できるという利点をご説明しましたが、追加の借り入れをしたり、長期間返済しないことによって利息が大きくなり「借入金+利息」が解約返戻金を上回ることがあります。また、一部商品では契約途中から解約返戻金が減っていく商品があるため、借入金が増えていないのに解約返戻金を上回るケースもあります。

このように「借入金+利息」が解約返戻金を上回った場合には契約が失効するので注意が必要です。

こういったことが起きないように生命保険会社は契約者宛の「お知らせ」を郵送するなどをするようにしていますが、借入額の管理をしておく必要があり、契約者貸付制度を利用する際の注意点の1つとなります。

また、利息の計算は単利ではなく年複利で計算されます。

単利と複利の計算方法の違いを「100万円を年5%の金利で2年間借りた場合」を例に計算してみると、 
単利:(元本)100万円+(利息 100万円×5%=5万円固定)×2年=110万円(借入額+利息)
複利:(元本)100万円+(利息1年目100万円×5%=5万円)+(利息2年目 105万円×5%=5.25万円)=110.25万円(借入額+利息)

バブル期の「お宝保険」の方が金利が高い

バブル期の「お宝保険」の場合、契約者貸付の金利が高いというデメリットがあります。

この時期の保険商品は保険料に対して満期保険金や年金額、解約返戻金の割合が大きいことから通称「お宝保険」と言われることがあります。市場の金利が高い時期の契約は予定利率が高く、その中には6%をこえる予定利率の商品もあります。契約者貸付制度の借入金利はこの「予定利率」の水準に応じて定められているため予定利率の高いお宝保険のような保険商品は借入金利も高く設定されており、カードローンなどより金利が高くなる場合もあります。

前述の通り、契約者貸付制度は保険会社・保険商品・保険契約の加入時期等によって金利の条件が異なります。他の借り入れ方法よりも契約者貸付制度の方が金利が高くなるケースもありますので情報の確認が大切です。

契約者貸付制度以外の選択肢

生命保険で積み立てているお金を解約することや契約者貸付以外でも保険を利用し資金を作る方法があります。
状況に応じて柔軟に使いたい場合には加入する保険を工夫したり、保険会社の他の制度を活用することもできます。

アカウント型の保険

アカウント型保険とは「積み立て部分=アカウント」と保障部分がある意味で分離されていている保険です。

一般的な保険は解約返戻金を取り出そうとすれば保険を一部解約する必要があり、保障額が少なくなるなど保障内容に影響が出ます。アカウント型保険は積立部分が保障部分と連動していないので、保障内容を変えずに積立部分のお金を一部引き出したり別途積み増したりすることができるなど、積立部分についての自由度が高い保険です。

保険金据え置きが可能な保険

保険商品のなかには満期保険金や配当金・お祝い金などをすぐに受け取らず据え置いておけるものが多いです。保険会社にお金を預けていることになるので保険会社所定の利息がつき、またいつでも自由に引き出しをすることができます。生命保険会社がつける利息は銀行預金よりも高いことも多く、このような保険を選ぶことで資金の管理が柔軟になるメリットも生まれます。

契約者貸付制度に関するQ&A

コロナの影響で無利子で契約者貸付制度を使えるって本当?

新型コロナウイルスによる家計への影響に配慮して、契約者貸付に適用する金利を一定期間0%にする特例運用を実施している保険会社が多くあります。

2020/08/01時点でほとんどの会社は0%金利適用の申し出期限を過ぎていますが、一部の保険会社はまだ受付をしています。また。0%金利を適用する期間は2020/9/30までとしている保険会社が多いですが、もっと長い期間0%金利を適用する保険会社(共済も含め)もあります。

契約者貸付制度の利用をご検討の際はご加入の保険会社までご確認ください。

まとめ

契約者貸付制度は便利な制度ですが、メリットとともにデメリットや注意点もあります。加入した保険がいざという時に機能しないのでは困りますので利用は慎重に検討してください。

また、家計が苦しい場合は保険の見直しをすることによって月々の負担を軽くできる可能性があります。契約者貸付をご検討されるのと併せてお近くの「保険のプロ」であるFPに相談をしてみてはいかがでしょうか。

執筆者

吉野 紀幸(ファイナンシャルプランナー)

1987年大学卒業後、生命保険会社に入社。24年間の勤務の間に代理店営業部門、営業所長等を経験。2011年代理店として独立し税務・法務の知識を活用して法人分野(経営者保険・福利厚生制度のプランニング等)や相続・事業承継分野を中心に活動し現在に至る。活動エリアは九州を中心に関西、首都圏等。
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