生命保険の必要保障額はいくら? 算出方法をレクチャー

生命保険

自分に万が一のことがあった時のために加入している生命保険ですが、いま入っている保障額は十分なのか、はたまた、余分に入り過ぎてないかと不安を感じている方は多いようです。

今回は生命保険の必要な保障額について、どのように考えれば良いのかをお伝えしていきます。

生命保険の必要保障額の算出方法

既に生命保険に入っているという方は、加入される際にどのように保障額を決められましたか?

「これぐらいの金額があれば大丈夫じゃない?」「会社の先輩と同じ金額にした」

色々な声が聞こえてきそうですね。でも同じ会社に勤めていて収入もほとんど一緒、家族構成も同じような先輩だったとして、先輩と同じ保障額の保険はあなたにピッタリなものなのでしょうか。

必要保障額を考える場合の一般的な計算式は、次のように考えられています。

残された家族のこれからの必要資金(支出見込額) ― 残された家族のこれからの収入見込額

なんだか当たり前のような気がしますね。ここでは細かく必要資金についてみていきます。

万一のときの家族の生活費

それでは具体的に考えてみましょう。収入の柱であるご主人が亡くなってしまった場合、残された家族の生活費はどのようになるでしょうか。

例えば、子育て中のご家庭の場合、ご主人が亡くなってしまったらその後のご主人に係る出費はほぼ掛からなくなります。しかし奥さんがこれまで通りの条件(労働時間や収入を考えて)で働いて家計を支えようとすると、家政婦さんなどのサービス利用が必要になるかもしれません。

そうなると、これまでの生活費とあまり変わらない金額、場合によってはそれ以上の金額がかかる可能性もあります。

生活費以外にかかるお金

住居費

既に家をお持ちの方なら、住宅ローンに対して支払者の万が一の際に団体信用生命保険などで備えられているかを確認する必要があります。

賃貸住宅にお住いの方であれば、その後に住む場所はどうなるのか。実家に帰って生活することができるのか。

その場合、リフォームなどが必要にならないのかといったことも考えておく必要があるでしょう。

教育費

教育費については、ご不幸があった場合でもどの程度まで援助をしてあげたいかというご夫婦の思いを確認しておきましょう。それに応じて、見込まれる教育費についてデータを基にして計算します。

老後の生活費

さらに、老後資金も検討する必要があります。長寿化で老後の期間が延びていますので、必要資金は以前より増加しています。

加入している年金の種類や納めた保険料によって受け取れる年金額は様々ですので、よく確認して計画する必要があります。

平均的な目安として、総務省の家計調査報告を見てみると、2020年度の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の消費支出は月額で224,390円です。

また、単身無職世帯の場合は消費支出の月額が133,146となっており、65歳から20年生活すると、単身でも3,200万円ほどの生活費がかかることになります。

参照:総務省 「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2020.pdf

障害や要介護になったときの生活費や療養費

場合によっては、死亡ではなく事故などによって重い障害を負ってしまうことや、重篤な病気によって療養が必要になることもあります。

その時には働くことができなくなって収入が減少することや、途絶えてしまうこともあります。住宅ローンを支払っている場合などは家族が住む家の確保も難しくなります。

ここでは詳細は割愛しますが、参考のために関連する記事を紹介しておきますね。

働けなくなったときのための「就業不能保険」とは? 働けなくなったときのための「就業不能保険」とは? あまり考えたくないことですが、ある日突然病気やケガで働けなくなる、という状況は誰にでも起こりえます。そのような場合に備えて、近年生命保険の一分野として、「就業不能保険」が脚光を浴びています。

必要保障額の算出方法の例

それでは、具体的に必要保障額の計算をしてみましょう。ここでは、会社員のご主人が亡くなった場合を例示します。

自営業の方の場合は、受け取れる遺族年金が遺族基礎年金のみとなる場合もあり、計算が異なります。詳細はプランナーに相談しましょう。

条件設定 子どもがいる家庭の場合

会社員Xさん(36歳)
家族構成:妻33歳・長女7歳・長男4歳
住宅は購入済み。ご主人がローンを組み、団体信用生命保険に加入
生命保険は未加入

残された家族のこれからの支出見込額

まず、残された家族が生活をしていくために必要な資金について見てみます。月々の生活費はもちろん、住宅費用やお子さまの教育費、その他かかる費用を洗い出して計算をします。

これまで受けた相談での事例を参考に支出見込額をまとめていますので下の表をご覧ください。

支出見込額

遺族の生活費 末子
独立まで
末子4~22歳の19年間(末子は23歳で独立)
月額20万円 x 12か月 x 19年
4,560万円
末子
独立後
妻52~88歳(妻52歳時平均余命)の37年間
月額15万円 x 12か月 x 37年
6,660万円
その他必要な資金 ・教育費*1
長女・長男(中学まで公立・高校は私立・大学は私立文系で自宅から通学)
1,925万円
・結婚資金 200万円
・住居費用
住宅ローン:残債無し(団体信用生命保険で返済)
固定資産税・都市計画税:年間15万円
リフォーム費用
1,700万円
・葬儀費用、お墓代 500万円
・家族のレクリエーション:年間10万円 妻64歳まで 320万円
・その他予備費用 300万円
合計 16,165万円

なお、この表には入っていませんが、地方での生活などで自動車が必要な場合は、購入資金や維持費も別途必要になります。
※ここに記載している金額は、あくまでも私が過去に相談を受けた事例です。実際には各ご家庭の状況で金額は変わってきます。

残された家族のこれからの収入見込額

次に、収入の見込です。ご主人が加入していた年金の種類や納付された保険料と期間に応じて、家族が受け取れる遺族年金額が計算できます。

それに奥様が働いた場合の収入の見込み、ご主人の死亡退職金、金融資産や換金できる資産などを加えて計算をします。

収入見込額

公的年金 長女7~18歳の12年間(遺族基礎年金・遺族厚生年金) 約2,064万円
長男16~18歳の3年間(遺族基礎年金・遺族厚生年金) 約450万円
妻48~64歳の17年間(遺族厚生年金・中高齢寡婦加算) 約1,819万円
妻65~88歳の24年間(遺族厚生年金・老齢基礎年金) 約3,000万円
*公的年金合計 約7,333万円
企業保障 死亡退職金 500万円
自己資産 預貯金、その他金融資産など 800万円
その他収入 妻のパート収入(年間96万円x35年間) 3,360万円
合計 約11,993万円

注)公的年金試算においては平成30年度のデータを使用しており、以後の物価スライド率は考慮しておりません。
注)妻はこれまで、第一号被保険者および第三号被保険者期間のみ 将来的にも給与所得者でない前提

必要保障額

支出見込額:16,165万円 ― 収入見込額:11,993万円 = 必要保障額:4,172万円
となります。

まとめ

実際に必要保障額を検討する場合には、保険に加入されるご夫婦、ご家族の思いをしっかりと受け止めたうえで考えていく必要があると考えています。

「まさかのこと」や「万が一」は無いのが一番ですが、それが起きてしまった場合に、家族の思いを実現するために必要な経済的状況はどのようなものなのか。

残された家族が大切な人を失った悲しみに加えて、経済的な困難に苛まれないようにするにはどうしたら良いのか。

そうしたことをしっかりと寄り添って考えてくれるプランナーに相談ができると良いですね。

これを踏まえて、皆さんには本当の意味で安心が感じられる保険に加入していただきたいと思います。

執筆者

速水 秀樹(ファイナンシャルプランナー)

1996年大学卒業後、繊維・化学メーカーに就職。ライフサイエンス関係の商品を海外展開する職務に従事。その頃「将来は海外での生活」を夢見るが、実母と祖母のダブル介護に直面し、サラリーマン生活に終止符。この時大きな人生の岐路に立ち、ライフプランニングと出会う。その重要性に気付き、自身がファイナンシャルプランナーへ。介護の経験、豊富な知識を生かし「お客様に誠実に寄り添い、本当の声を聴く」をモットーに活動中である。学生時代から登山が趣味。山登りで学ぶ先を読む力が、相談業務にも生かされている。執筆は、介護に関する記事も。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士AFP資格
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