保険会社が倒産することはある? そんなとき、どうしたらいいの?

生活

あなたの「もしも…」の時を支えてくれるはずの保険会社。「まさか保険会社が倒産なんて」と思いますが、一つの企業である以上絶対に倒産しないという保証はありません。今回は、そんな最悪の事態が起きた場合について考えてみましょう。

保険会社が倒産するケース

本当に保険会社が倒産することはあるのでしょうか。

実は、日本では過去8社の破綻事例があります。これらの事例のほとんどは、生命保険契約締結時に保険会社が約束した予定利率(契約者に約束する運用利回り)に対し、実際の運用がそれを大きく下回ったことが原因です。

いわゆる「逆ザヤ」と呼ばれるもので、主にバブル期の高い利回りに対し、バブル崩壊後の運用環境悪化によって発生しました。実際に保険会社の「倒産」はあったのです。

保険を契約する際に、こうしたリスクについて何かチェックする方法はないのでしょうか。

一つの指標として「ソルベンシーマージン比率」と呼ばれるものがあります。

1990年代後半から2000年代初めに起きたこれらの破綻を踏まえて、金融庁は保険会社の財務健全度を計り、保険金・給付金の支払い能力が十分にあるかをチェックすることになりました。

その指標となったのがソルベンシーマージン比率です。

株の暴落といった「運用環境の悪化」や今般のゼロ金利のような「金利の低下」、東日本大震災級の大災害によって起きる「保険金支払いの急激な増加」などが起きても、保険会社が保険金を支払い、健全な経営を保つことができる財政の余裕度を示す比率です。

この比率が200%を下回った場合、金融庁はその保険会社に対して早期是正勧告を行い、財務健全性確保に向けた改善の計画提出と実行を求めることが定められています。

この他にも格付機関(S&P、Moody’s、日本格付研究所など)による格付グレードも契約時に、保険会社の財務に対する評価を知ることができる情報です。

なおソルベンシーマージン比率については、各保険会社が開示を義務付けられている情報ですので、契約を検討する際に確認したり、プランナーに聞いてみましょう。

保険会社が倒産した場合の救済措置はある?

では、契約をした保険会社が倒産してしまった場合、自分の契約はどうなってしまうのでしょうか。

皆さんは銀行などの金融機関でお金を預けられていると思いますが、もしその金融機関が倒産した場合、自分の預金がどうなるかご存知ですか。「ペイオフ」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

一般的な預金口座にお金を預けている場合、1金融機関に対し一人の預金者の預金額1000万円までが「預金保険機構」によって保護されるというルールです。

生命保険契約者保護機構

一方、生命保険の契約にもこのようなセーフティーネットがあります。

それを担っているのが「生命保険契約者保護機構」です。

この機構は保険業法に基づいて設立され、国内で事業を行うすべての生命保険会社が会員となっています(共済や少額短期保険業者、特定保険業者等は会員ではありません)。

生命保険会社の破綻に対応

生命保険会社が破綻した場合、もしもその会社の事業や契約を引き継ぐ会社が現れないとどうなってしまうでしょう。

保険会社は売却した資産で得た資金を、契約者に配当として支払うかもしれません。

しかし、保険契約は継続できなくなってしまいます。

そうなると契約者はこれまでと同じ条件で、他の会社と新たに保険契約を結ぶことができなくなってしまう可能性があります。

元の契約時と比べて年齢が上がっていたり、健康状態が悪化している場合は当然条件が厳しくなります。

保険契約の継続

そのような事態が起こらないよう機構では、

  • 契約を引き継ぐ会社に対して資金援助を行う
  • 引き継ぐ会社が現れない場合、機構が契約を承継して継続させる

ことで契約者の保護を図るのです。

この場合、原則として保険会社が破綻した時点での対象契約の責任準備金*1の90%までが補償されます。
ただし、予定利率が高い契約については削減されることもあります。

*1 責任準備金:生命保険会社は将来の保険金・年金・給付金等の支払いに備え、保険料の一部等を積み立てますが、この積立金を責任準備金と言います。

契約条件の変更

保険契約が引き継がれた場合、「責任準備金の削減」や「予定利率の引き下げ」など契約条件が変更されることがあります。

契約した保険の種類によって、影響の大小が変わってきます。一般的には下記のようなことが言えます。

  • 保障性の高い商品(定期保険・医療保険など) → 保険金額の減少幅が小さい
  • 貯蓄性の高い商品(終身保険・養老保険・個人年金保険など) → 保険金額(解約返戻金)の減少幅が大きい

契約した時期によっても差が出てくることがありますが、予定利率が高い時期に契約した保険契約ほど保険金額・解約返戻金などの減少幅が大きくなります。

また、加入時期が同じ契約であっても満期までの期間が長い契約ほど減少幅が大きくなります。

なお、引き継ぎされる契約については注意も必要です。

通常、元の保険会社が破綻してから引き継ぎをする保険会社へ契約が移転されるまで解約をすることができません。

解約をする場合でも、契約条件変更後の解約返戻金などから、更に一定割合の削減がなされることもあります。

生命保険契約者保護機構についての詳細は、こちらのホームページも参考にしてください。
http://www.seihohogo.jp/

加入の際のリスクヘッジ

それでは、皆さんが生命保険に加入する際にどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

一つは冒頭に書いた保険会社のソルベンシーマージン比率や格付機関の評価を確認してみることが参考になります。

掛け捨て型の保険に加入

次は加入する保険の種類について考えることです。

契約条件の変更の所でも見たように、一般的には貯蓄性の高い商品は保険金額が大きく減少する可能性があります。

それに対し、定期保険(掛け捨て型)は減少額が小さく、万が一保険会社が破綻した場合でも保障を確保できる可能性が高いと言えます。

複数社の保険に加入

その他の方法としては、保険契約を1社に限定せず、複数の会社で契約することもリスクヘッジになりますね。

まとめ

今回は、保険会社の破綻と、それが起きた場合の状況について見てきました。

「まさか」と思われる保険会社の破綻ですが、皆さんの「まさか」の時を守る生命保険ですから、きちんと考えておくことが大切ですね。

保険の加入を検討する場合には、こうした情報や対策についてもプランナーに聞いてみることで安心感がアップすると思います。

執筆者

速水 秀樹(ファイナンシャルプランナー)

1996年大学卒業後、繊維・化学メーカーに就職。ライフサイエンス関係の商品を海外展開する職務に従事。その頃「将来は海外での生活」を夢見るが、実母と祖母のダブル介護に直面し、サラリーマン生活に終止符。この時大きな人生の岐路に立ち、ライフプランニングと出会う。その重要性に気付き、自身がファイナンシャルプランナーへ。介護の経験、豊富な知識を生かし「お客様に誠実に寄り添い、本当の声を聴く」をモットーに活動中である。学生時代から登山が趣味。山登りで学ぶ先を読む力が、相談業務にも生かされている。執筆は、介護に関する記事も。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士AFP資格
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