年金だけで老後生活は大丈夫? 今からできる備えとは?

生活

人生100年時代と言われる今日、平均寿命や高齢者の健康寿命が延び、定年を迎えても働き続ける方も増えているようです。とは言え、一般的にはどこかで仕事を引退し、老後の生活を迎えることになります。

長生きで老後の時間が長くなった分、これまでよりもしっかりとした準備が必要だと考える方も増えているようです。国の年金制度がどこまで私たちの生活を支えてくれるのかも含めて、老後資金について一度考えてみましょう。

老後のお金

老後に必要となる資金は「3000万円」とも「5000万円」とも言われますが、実際にはどれくらい必要なのでしょうか。

もちろん老後がいつから始まるのか、つまりいつまで働き「収入」を得られるかによりますし、持ち家があるか、健康かどうか、また日々どのような生活を送りたいかによって「支出」にも個人差があるでしょう。

そこでおよそのイメージを持つためにまず、現在既に老後を迎えている方たちの家計統計から将来準備すべき老後資金を推測してみましょう。

総務省の調査報告によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の月々の平均支出は255,550円となっています。その内、年金制度でまかなえるのはどのくらいなのでしょうか。

参照:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)家計の概要―」
総世帯及び単身世帯の家計収支
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/gaikyo/pdf/gk02.pdf

公的年金

国の年金制度である公的年金には、基礎年金と厚生年金の2種類があります。基礎年金は国民年金への加入期間によって、厚生年金は加入期間と支払った保険料によって受け取れる年金額が決まります。

同じく総務省の調査報告によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均年金受給額は219,976円となっていますので、老後の生活を支える大きな柱になっているようです。

しかし、年金受給額には今後大きな個人差が発生する可能性があります。働き方の多様化や共働き夫婦の増加によって加入する年金制度や支払う保険料は大きく変わりますし、人口減と超高齢化の進行、経済の変化によって年金制度そのものの制度変更が予想されるからです。

それでも、現時点で自分がどのくらいの年金を受給できるかは確認しておくべきでしょう。日本年金機構から届くねんきん定期便や「ねんきんネット」に登録することで、将来の年金見込み額が確認できますので、定期的にチェックするようにしましょう。

参照:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)家計の概要―」
総世帯及び単身世帯の家計収支
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/gaikyo/pdf/gk02.pdf

企業退職金・企業年金

企業にお勤めの方で、勤務先に退職一時金制度や退職年金制度があれば、老後資金の大きな助けになります。

厚生労働省の調査「平成30年就労条件総合調査:結果の概要」によると、「大学・大学院卒」で職種が「管理・事務・技術職」の場合、平均退職給付額は2,081万円となっています(勤続年数30~34年で退職一時金・年金制度併用の場合)。

一方で、制度見直しを検討する企業も増えており勤務先に頼りすぎることには注意が必要です。

また、退職金制度ではなく財形年金制度や確定拠出年金制度などを採用し、社員個人がそれぞれの判断で資産形成できる制度を取り入れ、企業はそれを支援するというスタンスが増えています。

勤務先で選択できる制度を確認し、自分の考えに合ったものを選択するようにしましょう。

自分の生活を考えてみよう

住宅・教育・老後の資金が人生の3大資金と言われていますが、人生におけるイベントはそれだけではありません。

老後を考える上で大切なのは自分の人生設計、つまりライフプランを考えることです。老後のことだけでなく、今から10年20年そして30年先へと続く人生の時々で、どのような生活を送り、どのようなイベントがあるのかを整理してみましょう。

収入と支出のバランス、貯蓄や投資割合、それぞれのイベントに対してどれ程の経済的準備が必要なのかをチェックすることが、プランニングの第一歩です。

自分で考えるだけでは不安であるならば、ぜひ信頼できるファイナンシャルプランナーを探してください。

客観的な意見を聞くことで気づくこともあるでしょう。また定期的にプランをチェックすることでより現実的な準備ができるはずです。

年金保険という選択肢

ここまで、老後資金準備としては国の公的年金制度や勤務先の制度を確認することの大切さをお話ししてきました。

より充実した老後生活を送るためには、個人による準備が必要です。個人が選択できる商品の一つに、民間の保険会社の年金保険があります。特徴や注意点をまとめておきます。

年金保険はどんなシステム?

年金保険に加入すると、毎月(または毎年)保険料として老後資金を積み立てることができます。60歳または65歳など、自分が設定した年齢まで積立てを継続すれば、その後、積み立てた資金を年金として受け取ることができます。

年金の受取方法には選択肢がありますが、オーソドックスなのは「確定年金」と言い、積み立てた資金を設定した年数に分けて毎年受け取る方法です。

年金保険の特徴としては、多くの保険会社が取り扱う商品においては利率が約束されていることです。

加入した時に約束した積立利率が最後まで適用されます。商品によっては利率が変動するものや、最低保証しているものもありますので確認してください。

保険料の支払い方も選択肢があり、積立て型の他に加入時に一括で支払う「一時払型」もあります。

公的年金との違いは何?

国の公的年金制度は、現役世代が払った保険料を老後を迎えた受給者が受け取るいわゆる「仕送り型」ですが、年金保険は自分で積み立てた資金を自分で受け取ることができる点で違いがあります。

また年金保険は、生命保険料、医療・介護保険料とは別枠の年金保険料として「保険料控除」を受けることができます。控除を受けるためだけに加入する必要はありませんが、毎年所得控除を受けられることを考えると是非活用したいですね。

どんなことに注意すべき?

多くの商品で積立利率が約束されていますが、この低金利時代では年金保険の利率もそれ程高い訳ではありません。また、加入してから比較的早期で解約した場合は、支払った保険料が全額返金されないことがあります。

資金計画を立て老後まで継続するつもりで加入するのはもちろんですが、やむを得ない理由により途中で解約せざるを得ないケースもあるでしょう。何年後に解約するとどの程度返金されるのか予め確認しておきましょう。

また、他の金融商品と同様、積立利率が固定されることは必ずしも有利であるとは限りません。物価が上昇することで貨幣価値が下がる、いわゆるインフレリスクがあることは頭に入れておくべきでしょう。

加えて、年金保険の中には外貨建て商品や変額商品など投資性の商品も多く販売されています。商品のメリットばかりに捉われず、自分の考えや許容できるリスクに見合った商品を選択したいですね。

年金保険の種類

それではもう少し詳しく、個人年金保険についてみてみましょう。将来受け取れる年金額が契約時に決まっている「定額年金保険」と、変動幅の大きい金融商品で資産運用し、その運用実績によって年金額が変わる「変額年金保険」の大きく2つに分かれます。

定額年金保険

定額型の個人年金保険は、契約時に設定した期間(60歳・65歳・70歳までなど)まで保険料を積立て、その年齢になると支払いは終了し、逆に年金受取りが開始します。

積み立てた保険料は契約時の予定利率によって運用され、契約時点で将来受け取れる年金額が決まっていますので、資金計画が立てやすく安心感があります。

しかしそれは逆に、物価上昇(インフレ)による年金額の目減りに対応できないというデメリットにもなっています。
商品比較する場合は、払い込んだ保険料総額に対して受け取れる年金総額はいくらなのか、いわゆる返戻率(へんれいりつ)に注目しましょう。

ただし、積立期間が同じでも払込方法や受取方法によって返戻率は異なりますので注意が必要です。

変額年金保険

一方、変額型の個人年金保険は、株や債券などの運用先を自分で選びます。1つだけ選ぶことも複数組み合わせることもでき、また途中で変更することもできます。

契約時に払込期間を設定することは定額型と同じですが、受け取れる年金額は運用次第であり、その運用成績次第では、年金総額が払い込んだ保険料総額を下回る可能性もあります。

変額型を選択する場合は、リスクをできる限り軽減するためのポイントがあります。始める前に、ぜひ信頼できるファイナンシャルプランナーに相談してください。

商品比較する場合には、選択できる運用先の種類と実績、運用コストや運用先の変更可能回数などをチェックしましょう。

年金保険の加入に向いている人

どのような金融商品も、メリットとデメリットの両方を併せもっています。そのデメリットは、得られるメリットに対して妥当なのかどうかを見極めなければなりません。

年金保険で言えば、金利が長期に固定されることを安心感とみるならメリットの1つと言えるかもしれません。また新たに保険料控除を受けれるなら税金面のメリットもあります。

逆に最大のデメリットとなるのが、続けられなかった場合、特に早期で解約ということになれば元本割れする可能性があることでしょう。特に変額型では運用結果は読めません。

毎月の積立ては大事だと分かっているけどなかなか実行に移せない、なかば強制的に引き落としてくれたほうが積み立てられる、という人にはとても向いているのではないでしょうか。

まとめ

今回は、老後資金を準備する上で押さえておくべきポイントをお話ししてきました。ライフイベントの中では一番遠い位置にある「老後」ですが、老後の生活を考えることで自分の仕事観や人生観、またはお金に対する価値観を見つめる機会にもなります。

準備する時間が長いからこそ、少しずつの積み重ねが結果大きな違いを生むとも言えます。ぜひ検討する時間を作ってみてください。

執筆者

宮脇 英寿CFP®資格

中学高校の数学教師を経てファイナンシャルプランナーの道へ。「100歳まで元気に生きるためのライフプランニング」が独身者、家族世帯を問わず好評である。年間100世帯以上の個別相談に対応しながら、確定拠出年金や住宅ローン、ねんきん定期便の見かた等各種セミナー講師も担当。プライベートでは小・中・高校生の3人の子どもの子育て中である。
■保持資格:CFP®資格住宅ローンアドバイザー宅地建物取引士
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