民間保険の解約前に一読! 解約のデメリットと新型コロナウイルス感染症で保険料が払えない時の対処法を解説

生活

新型コロナウイルスの流行により、日本では2月頃から飲食業や観光業を主体に自粛が始まり、4月7日には国による緊急事態宣言が発令されました。

5月25日に緊急事態宣言は解除されたものの、今後も経済へのダメージは計り知れません。
収入ダウンやボーナスの減少など、家計が苦しくなる中で、保険契約の解約を考えている人もいるのではないでしょうか?

でもちょっと待って下さい。

一時的な家計の負担軽減のために解約するのはデメリットがあまりにも大きいといえます。
ここでは、保険契約を解約しなくても、家計への負担を軽減する方法や、このコロナ禍でどのように保険と向き合えばいいのかについてもご紹介します。

民間保険を解約する3つのデメリット

まずは、保険を解約する際のデメリットを確認しておきましょう。

一度解約したら元には戻せない

いったん解約手続きが完了してしまうと、元の契約に戻すことは出来ません。

多くの場合、年齢が上がると保険料は高くなるため、同じ内容の保険に再加入したとしても保険料は高くなります。また、解約返戻金があるタイプの保険であっても、契約してから間もない解約だと解約返戻金がゼロ、あってもごくわずかということがあります。

再加入する場合も、あらためて加入時点での健康状態の告知が必要です。もし健康状態に問題があれば加入出来なかったり、一定期間該当部位や疾病に対して保障対象外となったりするなどの制約が発生することもあります。最近では持病があっても加入しやすい保険もありますが、通常の商品よりも保険料が割り増しになっています。

また、保険契約は主契約と特約が組み合わさった商品が多いですが、主契約を解約して特約部分だけを残すことは出来ません。例えば主契約が死亡保障、特約が入院や手術などの医療保障となっているケースでは、死亡保障は不要だが医療保障だけを残したいといっても死亡保障だけを解約することはできず、一旦全て解約後に別途医療保険に加入する必要があります。

新たな保険に加入するまでの無保障期間

保険契約の成立には、「申し込み」「告知・診査」「第1回保険料の払い込み」の3要件を満たす必要があります。これらの要件を満たして成立する前に先走って元の保険を解約してしまうと、契約内容の不備や告知内容の査定結果に問題があり加入出来なかった場合には保障が無い空白期間が出来てしまう可能性があります。

また、一般的にがん保険やがん特約は加入してから90日間は保障を受けることが出来ないとする、免責期間が設けられています。これは体調不良でがんに不安を感じている人が急いで保険に加入し、契約後早々に給付金を受け取るなどのモラルリスクを防ぐためです。同じような理由で、生命保険は加入後一定期間内(保険会社によって異なりますが1~3年)の自殺については支払わないとする免責事項がありますので、注意が必要です。これらの無保障期間を防ごうと思うと、新たな保障が始まるまでは今までの保険を解約せず続ける必要があります。

解約後過去の請求漏れは取り戻せない?

保険契約を解約したあとでも、保険金・給付金が受け取れることが判った場合、遡って請求することは可能なのでしょうか?

実は解約をした後でも、解約日以前に支払い対象事由に該当していれば請求が可能です。また、請求手続き中に解約した場合でも、支払対象となる請求手続きには影響はありません。

しかし、請求手続き自体に時効が設けられている保険会社もあり、請求権は支払い事由が発生してから3年となっている会社が多いです。保険契約を解約すると契約内容のお知らせなども送られてこないため、保障内容を忘れてしまい、時効を迎えてしまう可能性が高くなってしまいます。こうしたことの無いように、保険加入期間に請求対象になるような入院や手術をしていないか、全て請求手続きをしたかどうか、しっかり確認するようにしましょう。

保険料支払いには猶予あり!

一時的な収入ダウンやボーナスの減少などで保険料の払い込みが難しい場合には、支払猶予制度が設けられています。

新型コロナウイルスの影響で生命保険は最長6カ月延長猶予

もともと何らかの理由で保険料の払い込みが遅れた時のために払込猶予期間が設けられており、通常月払い契約は払込期日の翌月末まで、半年払いや年払いは翌々月の末日または契約応当日までとされています。
これを過ぎると失効といって保険の効力を失った状態になるのですが、新型コロナウイルスの影響により保険料の支払いが難しくなった方のために、各生命保険会社では保険料の払い込みに関する特別猶予期間を設けています。現時点では最長6ヶ月間、2020年9月30日までとしている保険会社が多くなっていますが、再延長を表明している保険会社も出てきています。

新型コロナウイルス感染症に関する保険会社の対応について
https://www.itcstg.jp/dl/oshirase20200413.pdf

ポイントは新型コロナウイルスに感染した方だけでなく、“影響を受けた”方となっているので、どなたでも対象となっていることです。また、自動的に適用されるわけではなく、お客様相談窓口に契約者からの申し出が必要であることと、支払免除ではなく、9月30日までにまとめて保険料を支払う必要があることです。分割支払いが可能な保険会社も一部ありますが、いずれにしても支払えなかった場合は契約失効となり、保障が無くなってしまいます。詳細は保険会社によって異なりますので、ホームページなどでご確認下さい。

新型コロナウイルスの影響で損害保険は9月末まで猶予

各損害保険会社でも生命保険会社と同じく、保険料の払い込み期間に関する特別猶予期間を設けています。こちらも最長6ヶ月間、2020年9月30日となっている保険会社が多くなっています。

新型コロナウイルス感染症に関する保険会社の対応について
https://www.itcstg.jp/dl/oshirase20200413.pdf

新型コロナウイルスに感染したといった直接的な影響がなくても対象となります。ただし、新規契約・契約内容変更については履行保証保険や、入札保証保険、法令保証保険、興行中止保険や、保険期間1年未満のものは除くとしている保険会社もありますので、詳細は各損害保険会社のホームページなどでご確認下さい。

保険更新の手続き期間にも猶予の可能性!

保険には保険期間が1年や10年など、一定年数で契約が満了し、更新手続きが必要なものがありますが、新型コロナウイルスの対応で職場や家庭でバタバタしていて、うっかり更新手続きを忘れてしまっていた……なんてこともあるかもしれません。しかし、保険の契約更新手続きについても、各種手続き期間の猶予が設けられています。

生命保険の更新延長は個別対応

各生命保険会社によって対応は異なりますが、保険契約の更新手続きが難しい場合、または更新日までに手続きが行えなかった場合には、申し出により更新日に遡った手続きをしてもらえます。

新型コロナウイルス感染症に関する保険会社の対応について
https://www.itcstg.jp/dl/oshirase20200413.pdf

対象期間は各生命保険会社によって異なりますので、詳しくはホームページなどで確認して下さい。

損害保険の更新は9月末まで延長

各損害保険会社も契約締結手続きの猶予期間を設けています。契約者自身が新型コロナウイルスに感染したといった直接的な影響だけでなく、感染疑いに伴い自宅待機を要請されている場合や、感染防止を目的として代理店との面談を希望されない場合、また契約の代理店が休業や事業縮小、対面募集を自粛している場合などにより、通常の契約手続きが困難となるような間接的な影響を受けた場合も含みます。

新型コロナウイルス感染症に関する保険会社の対応について
https://www.itcstg.jp/dl/oshirase20200413.pdf

猶予期間は9月30日までとしている保険会社が多いですが、詳細は各損害保険会社のホームページなどでご確認下さい。

新型コロナウイルスの影響で生活が苦しい方への資金援助は多数存在

保険料支払や更新手続きの期間猶予があったとしても、そもそも手元資金が不足していて保険契約の継続が難しい場合もあるかと思います。一時的な資金調達や給付についても様々な方法がありますので、上手く活用しましょう。

公的機関の保障も多数

公的機関がおこなっている新型コロナウイルスに伴う主な支援策を挙げます。対象が事業主であるものと個人であるもの、助成や給付が受けられるもの(返済不要)と、融資が受けられるもの(返済が必要)とに大別しています。主な条件と支援策、概要について記載していますが、内容は刻々と変わっていますので、詳細はリンク先をご確認下さい。

事業主:休業補償

事業主:資金繰り

個人事業者:休業補償

こどもの世話で仕事が出来なくなった→小学校休業等対応支援金
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10231.html
フリーランス向け 1日あたり給付額4,100円~7,500円

個人:生活支援

個人:申請不要

児童手当に上乗せで支給→子育て世帯給付金
https://www.mhlw.go.jp/content/000623953.pdf
2020年3月および4月の児童手当対象の児童1人につき1万円

支援策の内容は日々更新・追加されています。詳しくは各ホームページや、最寄りの区役所などの相談窓口でご確認下さい。

新型コロナウイルスの影響を受けた場合は利息がゼロ

生命保険でも損害保険でも、解約返戻金がある型の保険は、解約返戻金の一定範囲内で貸付けを受けることが出来る「契約者貸付制度」があります。一般的に契約者貸付を受けている間でも保障は変わりなく受けることが出来、返済は一部または全額をある時払いで、自由なタイミングで返済することが可能です。注意点としては、貸付金には所定の利率で利息(複利)を支払う必要があり、予定利率が高い契約は貸付利率も高くなるため、総返済額も多くなることです。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により影響を受けた方を対象に、対象期間中に新規または追加で契約者貸付を利用した場合は利息を免除(適用金利0.0%)する特別対応を実施しています。受付期間は2020年5月31日までとしていたところが多かったですが、6月30日まで延長する保険会社が増えてきました。特別金利0.0%の適用期間は9月30日までとなっている保険会社がほとんどですが、一部保険会社では12月31日までに延長しています。

新型コロナウイルス感染症に関する保険会社の対応について
https://www.itcstg.jp/dl/oshirase20200413.pdf

なお、すべての保険会社で同じ対応をしているわけではありません。また、商品によっては解約返戻金があったとしても契約者貸付の対象外となっているものあります。今後も随時各保険会社で受付期間・適用期間・適用条件が変更される可能性がありますので、まずはご契約先の保険会社に確認するようにしましょう。

民間保険を解約する以外の代替案

様々な猶予策や資金調達をおこなったとしてもやり繰りが間に合わず、保険料そのものを安くしたいということもあるかと思いますが、保険料を安くする方法は解約だけではありません。

保険金の減額

保険金の減額とは、保険契約の保障額を減らすことで保険料の負担を軽くする方法です。また、減額部分に相当する解約返戻金を受け取ることが出来ます。例えば生命保険金2000万円で契約していた場合、保険金額を半分の1000万円に減額すると、以降の保険料が半分になります。また、解約返戻金がある契約の場合だと、手続き時点の総解約返戻金額の半分を受け取ることになります。

いったん減額手続きを行うと、元に戻すことは出来ません。解約返戻金についても多くの場合、払い込まれた保険料よりも少なく、契約時期や商品によってはゼロもしくはわずかな金額となります。また、最低保険金額や最低保険料が保険会社の規定で設定されている場合は、それを下回る減額をすることは出来ないなどの制約があります。

保険の特約の解約

保険は、主契約と特約の組み合わせで構成されている商品が多くありますが、特約解約とは付加されている特約だけを解約する方法で、その分保険料負担が軽くなります。また、解約した特約に解約返戻金があれば、それを受け取ることが出来ます。

主契約の生命保険金500万円に、傷害特約200万円、医療特約日額5000円、通院特約3000円といった契約形態の場合、主契約の生命保険だけを残し、残りの特約をすべてまたは一部を解約するといった手続きが考えられます。

減額と同じく、いったん手続きを行うと元に戻すことは出来ませんので、ご自身の健康状態もしっかり踏まえた上で検討するようにしましょう。

新型コロナウイルスの影響でもし保険料を払えなくても、まずは相談を

日本ではいったんは収束傾向にある新型コロナウイルスですが、有効なワクチンや対策が確立出来ていない現状では、第2波・第3波への備えも必要ですし、その分経済への影響もまだまだ続くことが想定されます。

今を生き抜くためのお金が必要なのは当然ですが、一時的に保険料を払えなくなったとしても、これまで見てきた通り様々な対応方法があります。安易に保険を解約してしまうのではなく、極力続ける方法を模索しましょう。

特に医療保険では、新型コロナウイルス感染症を原因とする疾病はその他の疾病と同じく入院給付金や手術給付金の給付対象となります。また、医療機関の事情により医師の指示で自宅での治療や、ホテルなど臨時施設での治療を受けた場合にも、新型コロナウイルスの特別対応として給付対象としている保険会社もありますので、出来る限り保障を継続しておきたいところです。

元々保障内容が重複していることもあるかもしれませんし、ご加入の健康保険組合の付加給付などを考慮することで必要な保障額を見直せる可能性もあります。1人で悩まず、まずは保険のプロであるファイナンシャルプランナーにご相談下さい。

執筆者

鷹尾 和哉(ファイナンシャルプランナー)

2000年大学卒業後、大手システム開発会社に入社しインターネットバンキングなどの開発に従事。自身のライフプランを立てたことがきっかけでFPの資格を取得、その後外資系保険会社に転職し、約300世帯のライフプランを任される。よりお客様に寄り添った提案がしたいと2012年に現職へ。家計や保険の見直し、相続、資産運用などの個人相談業務を数多く行っており、個別の資金計画がとてもわかりやすいと好評を得ている。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士AFP資格トータル・ライフ・コンサルタント
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