差額ベッド代って何? 入院費用の基礎知識

医療保険

入院したときにかかる費用にどんなものがあるか、ご存知でしょうか。治療費、食事代といったもののほかに、意外に大きな割合を占めるのが「差額ベッド代」です。今回は、それがどんなものか、その負担を軽減するための方法はないのか、などを解説していきます。

差額ベッド代とは

診療に関するものは一部を除いてほぼ健康保険の対象になりますが、今回のテーマであります差額ベッド代は健康保険の対象外の代表とも言えます。

正式には「特別療養環境室」

差額ベッド代や個室料などと呼ばれていますが、正式には特別療養環境室という名称になります。ご存知でしたでしょうか。

ではどんな時に差額ベッド代はかかるのでしょうか?

  • 一病室の病床数が4床以下であること。
  • 病室の面積が一人当たり6.4平方メートル以上であること。
  • 病床のプライバシーを確保するための設備があること。
  • 少なくとも「個人用の私物の収納設備」「個人用の照明」「小机等及び椅子」の設備があること。

この4つの条件を満たした病院の個室等の病室に入院した時に差額室料がかかることになります。

参照:厚生労働省「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」特別の療養環境の提供に係る基準に関する事項 
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000123520.pdf

健康保険は適用外

この差額ベッド代は公的医療保険の対象外となっております。当然、高額療養費制度でも対象外となり、全額自己負担となりますので、入院日数が長くなると大きな負担となってきます。

どんなときにかかるのか

差額ベッド代がかかるときはどのようなケースなのでしょうか?

次の2つが考えられます。

  • 同意書にサインをした場合。
  • 患者自らが希望した場合。

差額ベッド代の例

平均的な1日あたりの金額

中医協(中央社会保険医療協議会)の調べによると、令和4年7月1日現在の差額ベッド代の1日平均額は6,620円でした。

各部屋の平均差額ベッド代

1人室 8,322円
2人室 3,101円
3人室 2,826円
4人室 2,705円

ちなみに差額ベッド代の最低は1日50円、最高で1日385,000円となりました。
1日385,000円というのはどんな部屋なのでしょうか。ちょっとびっくりですね。

参照:中央社会保険医療協議会「主な選定療養に係る報告状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001117412.pdf

入院中にかかるその他の費用

入院すると、医療費以外にかかる費用はたくさんあります。
すべて健康保険適用外ですので、貯蓄などでまかなう部分になります。
その他にもいくつかの項目で費用がかかりますので、みていきましょう。

本人にかかるお金(治療費・食事代)

1食460円。1日1,380円×入院日数が自己負担になります。
入院生活に必要な日用品。パジャマ、下着、洗面用具など。

家族にかかるお金(交通費・食費)

病院にお見舞いにくる家族の交通費など。
配偶者や子どもがいる場合の外食費など。

その他のお金(お見舞いへのお礼)

お見舞いに来てくれた方へのお礼。
仕事ができない間に事業を継続するために代わりの人を雇う資金など。

このように、さまざまな健康保険適用外の費用がかかることがわかります。

差額ベッド代を見越した医療保険の入院日額

では実際に入院した場合、どの程度のお金(自己負担)がかかるのでしょうか。
(公財)生命保険文化センターの調査によると、入院時の自己負担費用は、1日平均20,700円となっています。

費用の分布をみてみますと、「10,000~15,000円未満」が23.3%と最も高くなっています。
また、「20,000~30,000 円未満」が16.0%、次いで「5,000円未満」が13.8%、「40,000円以上」13.2%順で高くなっています。

これらの費用には治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含みます。
高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額です。

参照:(公財)生命保険文化センター 「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf

差額ベッド代は医療費控除の対象外

本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象になりません。

国税庁のホームページに以下のような記載がありました。

照会要旨 いわゆる差額ベッド料は、医療費控除の対象になりますか。
回答要旨 入院の対価として支払う部屋代等の費用で医療費控除の対象となるものは、医師等の診療等を受けるため直接必要なもので、かつ、通常必要なものであることが必要です(所得税基本通達73-3)。したがって、自己の都合によりその個室を使用するなどの場合に支払う差額ベッド料については、医療費控除の対象となりません。

参照:国税庁 質疑応答事例 所得税 差額ベッド料
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/16.htm

差額ベッド代を支払わなくても良いケース

しかし、差額ベッド代を支払わなくても良いケースがありますので、順番に解説していきます。

治療上の都合から特別室に入った場合

患者本人の治療上の都合により特別療養環境室へ入院させる場合。
いくつかの例を見ていきましょう。

  • 救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
  • 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
  • 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者

病院上の都合から特別室に入った場合

病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合。

  • MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者の場合
  • 特別療養環境室以外の病室の病床が満床であるため、特別療養環境室に入院させた患者の場合

同意書による確認が行われなかった場合

同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)。

参照:厚生労働省「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000638289.pdf

差額ベッド代の備えとして医療保険に加入しよう

差額ベッド代は公的医療保険の適用対象外になります。入院したときに良好な環境で療養したいのなら、差額ベッド代の支払いにも備えておきたいものです。

そのとき、選択肢の一つとなるのが医療保険になります。医療保険には入院日数に応じて給付される入院給付金や手術をしたときに一時金を受け取れる手術給付金がありますので、公的医療保険の対象とならない差額ベッド代などの支払いに充てることができます。

先に紹介した1日当たりの差額ベッド代の平均額を参考にしつつ、ご自身のニーズに合わせて無理のない範囲で医療保険によるカバーを検討しておくとよいと思います。

まとめ

今回は、差額ベッド代の発生する条件、差額ベッド代の負担額の目安、差額ベッド代を考慮した医療保険の入院日額について解説をしてきました。

差額ベッド代は健康保険の適用対象外であるため、そのほかの入院費用と比較して高額となってしまうことが多いです。

そのため、差額ベッド代の必要な病室に入る希望があるかどうかでかかる金額が変わりますので、計算することでそれぞれの必要保障額が分かると思います。

また、差額ベッド代の必要な病室を希望していない場合でも、同意書に署名をした場合などには差額ベッド代が発生してしまうことがあります。

このような不要なトラブルを避けるためにも、差額ベッド代について正しい知識を持つことが大切であるといえます。

長期の入院となれば予想以上の出費となることが想定されます。

家計に影響が出ないようにするためにも、医療保険等で差額ベッド代をカバーしておくと安心です。

差額ベッド代は病院や地域によって大きく異なりますので、自分に必要となる給付金額を知りたい人はファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。

執筆者

宮野 亮一(ファイナンシャルプランナー)

1995年大学卒業後、空調関係のメーカーに就職。このころ職業能力検定の一つとなったファイナンシャル・プランニング技能士、いわゆるファイナンシャルプランナーという仕事に興味を持ったことがきっかけで、2001年に損保系生命保険会社へ転職。主な業務は、家計相談やライフプランニング、そして個人・法人保険の販売。12年の経験を積み、より幅の広いコンサルティングアドバイスするために現職へ。個人の家計相談はもちろん、ライフプランセミナー、相続・事業承継等のコンサルティングを行う。ほけんペディアでも、幅広い分野の記事を執筆中。
■保持資格:AFP資格2019年度MDRT成績資格会員(Court of the Table会員)相続診断士
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